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歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 大音寺前」
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いつの時代も豊かな黒髪は魅力的!
日本髪を結う時に、髪の長さやボリュームを補うために添える付け毛が髢(かもじ)です。髢の歴史は古く、奈良時代にはすでに使われていたようで、『養老の衣服令』(701年)の女官の髪型には「義髻」という付け毛を表す言葉が見えます。
平安時代は頭に被るタイプの物も、付け毛タイプの物も「かつら・かづら」と呼ばれ、区別はされていなかったようです。平安中期の辞書『和名抄(和名類聚抄)』には、「髲和名加都良(ひ わみやう かつら)釈名(しゃくみょう/後漢末の劉熙が著した辞典)に云(いふ)髪少者所以被助其髪也(かみすくなきものかけてそのかみをたすくるものなり)」と書かれています。
当時は長い黒髪が美女の条件とされた時代。髪の短い人、少ない人は、鬘(かづら)を使ってロングヘアに見せていました。源氏物語 末摘花の巻に「わが御髪の落ちたりけるを取り集めて鬘(かづら)にしたまへるが九尺余ばかりにて…」と、抜け落ちた髪を取っておいて鬘にする様子が描かれています。「枕草子」の「かっこうのつかないもの」の項にも鬘が登場。「髪の毛短いひとの、かづらをとって髪をくしけずる」と書いています。地髪が短い人にとって、鬘は必需品だったことでしょう。
「かづら」が「かもじ」と呼ばれるようになったのは室町時代。「髪」あるいは「かつら・かづら」に「文字」が付いた宮中の女房言葉に由来していると言われています。
古くは垂髪に長さを足すための付け毛でしたが、多くの人が髪を結うようになり、江戸時代中期以降は多種多様な髢(かもじ)が開発されました。抜けた髪を買い集める「おちゃない」という職業まで登場し、袋を頭に載せて「おちゃないか(落ちた髪はないか)」といって町を歩いたということです。時代を経るにつれ、髢はますます必要とされていきました。
*元禄(1688~1704年)頃の「人倫訓蒙図彙」に、「…女のかしらに袋をいただき、髪の落をかい、かもじにして売り買い、世渡るわざとす…」との おちゃないの解説がある。
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「百人女郎品定」(1723)より おちゃない
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様々な髢で流行のヘアスタイルを楽しんだ江戸時代の女性たち
●公家・武家の髢
御所の女官や御殿女中が式日(儀式の日、または祝祭日)に使用した髢に、長髢(ながかもじ)・中髢(ちゅうかもじ)があります。
長髢は六尺〜五尺五寸(約165〜180cm)(『千代田城大奥』より)で、「お長」と呼ばれる「おすべらかし」に使われました。(『御殿女中』の図では七尺) 中髢は三尺(約90cm)で、お目見え(将軍と御台所への目通りを許された上級の女中たち)の中でも身分の低い女中などが使用しました。
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京都風の長かもじ(『御殿女中』より)
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御殿女中の長かもじ(『御殿女中』より)
●民間の髢
江戸時代には一般庶民の間で多くの髪型が流行し、それに伴い様々な髢(かもじ)が考案されました。安永八年(1779)京都で刊行された髪の雛形本『当世かもじ雛形』には、髢や鬢張(びんはり)、髱型(つとがた)など、当時使われた髢類の図が掲載されています。毛の付いた鬢張やびんづら、けしほんなど、今では見ることのない物が多く、たいへん興味深いです。
女用訓蒙図彙(1687年)より
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『当世かもじ雛形』髢の図(1779年)
左頁/つりはけ(吊り刷毛) 中つりはけ けしほん つとうら(髱裏) かたびん(片鬢) 中かもじ まえかみ(前髪) ひんみの(鬢蓑)
右頁/長かもじ ひんはり(鬢張) いれづと(入髱) さしづと(挿髱) びんづら(鬢づら) いかたかもじ(筏髢)
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『古今百風吾妻余波』(明治18年)より
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大阪美髪女学校『結髪講義要領』(大正11年発行)より
●現代の髢
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左/シャグマ(ヤクの毛)
中央/前髪添え 右/カブタ
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左/根巻き 右/根かもじ
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鬢簑(びんみの)