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◆結髪に用いる道具類

江戸時代初期から明治・大正に至る間、黄楊や竹などの櫛をはじめ、足りない髪を足すための髢(かもじ)、形を整えるための鬢張りや髱差し・髷型など、数多くの道具類が考案されました。ここでは大阪美髪女学校『結髪講義要領』(大正11年発行)に掲載された櫛類、髢類、髷型や付属用品をご紹介します。

*名称は時代や地域によって異なることがあります

結髪用櫛道具

『結髪講義要領』(大阪美髪女学校発行)より

櫛 日本髪

(一) 鋏(はさみ)鋏は主に元結ひ、懸物(かけもの)紺土佐(紺紙の事)を剪(き)る時に用ふ 

(二)荒櫛(あらぐし) 主として髪を荒解きする時又は雲脂(ふけ)を落す時に用ふ

(三)梳櫛(すきぐし)(竹製)雲脂落とし下梳の時毛の癖を直し又は毛垢を取る時に用ふ、此の竹製の梳櫛は主に毛の

   多い人に用ふ

(四)お六櫛(おろくぐし)(黄楊製)前の梳櫛と同様に用ひられるが之は黄楊の木にて作られた故 雲脂落しの場合頭の

   地皮膚を荒さず所謂(いはゆる)柔かく頭の地に當(あた)る故に毛髪の尠(すくな)い人の雲脂落しに主として用ふ (五)荒筋立(あらすじたて) 荒歯の荒筋立の事で毛筋を分け髷の荒解き等に用ふ

(六)中櫛(ちゅうぐし) 荒解きの次に用ふる櫛で廻り即ち前髪髻鬢髱等を作る時に用ひ、又髷を作る時に用ふ

(七)深歯(ふかば) 髱(たぼ)の横を解く時又鬢(びん)等を膨らます時に用ふ

(八)鬢櫛(びんぐし) 鬢を解く時に用ふ

(九)五本歯(ごほんば) 鬢を膨らます時に用ふるのであるが主に年増の髪に用ふ

(十)小深歯(こふかば) 鬢の生え際を膨らます時に用ふ

(十一)元結ひ通し 輪物を作り又は元結ひを通す時に用ふ

(十二)細歯筋立(ほそばすじたて) 筋立の仕上げ櫛の事であつて髷又は鬢の端髱等の仕上げに用ふ

(十三)前髪押へ(まえがみおさえ) 前髪に添毛(そえげ)を入れる時に用ふ

(十四)荒目筋立(あらめすじたて) 髷に毛筋を附(つ)ける時に用ふ

(十五)鬢尻上げ(びんじりあげ) 鬢尻又は髱を膨らまし又は其の仕上げに用ふ

(十六)篦(へら) 髷の位置を作る時に用ふ

(十七)前髪押へ(まえがみおさえ) 前髪を大きく膨らます時に用ふ

(十八)鼠歯(ねずみば) 髷の仕上げに用ふ

(十九)撫棒(なでぼう) 毛を撫で揃へる時に用ふ

(二十)コマ櫛 鬢附(びんつけ)を引く時又は往時(むかし)の髪の鬢の仕上げにに用ふ

(廿一)コマ櫛同様舊式(旧式/きゅうしき)の髪の鬢の仕上げに用ふ

(廿二)刷毛 老女(としより)等の毛を黒く俗に云ふクロンボを塗る時に用ふ

結髪用髢類

『結髪講義要領』(大阪美髪女学校発行)より

かもじ 日本髪

(一) 髻髢(ねかもじ) 自毛の多い人には此(こ)の髻髢(ねかもじ)の毛の少いのを用ひ梳髪(すきがみ)には此の

    根髢(ねかもじ)は用ひぬ 髷の大小に依つて髻髢の髻駒(ねこま)即ち小枕の大小の區別(くべつ)がある 自毛の

    多い人には根駒の小さいのを用ふるのである

(二)髱蓑(たぼみの) 髱毛(たぼげ)の少い人に用ふる髢である

(三)前蓑(まえみの) 前髪の毛の少ない人に入れる

(四)髱芯(たぼしん) 梳毛で作つて髱の芯に入れる

(五)横毛(よこげ) 横添への髢で輪物(わもの)即ち銀杏返し(いちょうがえし)桃割(ももわれ)

   貝蝶々(ばいちょうちょう)三つ髷(みつまげ)等の輪を作る場合の先添へに使用する

(六)捌き(さばき) ばら毛とも云ひ島田髷の先添(さきぞえ)又は梳髪の添毛に用ふ

(七)梳毛(すきげ) 束髪の前髪の芯に用ふ

(八)同じく髱の芯に用ふ

(九)浮輪(うきわ) 束髪の廻りの芯に用ふ

(十)束髪髢(はいからかもじ) 又の名を花月とも云ふ 束髪の乗せ髷を作る時にも添毛の時にも用ふ

(十一)乗せ髷 花月で作った束髪の乗せ髷である

(十二)シャグマ 同じく乗せ髷である

(十三)膏薬(こうやく) 中髻(なかね)の禿げたひとの髻(ね)を作る時に用ふ

(十四)四割禿隠し(よつわりはげかくし) 此の四割禿隠しは前髪、両鬢、髱と四つ毛を分けてある故に四割と云ふのである、

              此の四つ割の外に三つ割禿隠しと云ふのがある  即ち前髪が無くて左右両鬢と髱の三つに毛が分けてあるからである

(十五)髱の釣蓑(たぼのつりみの)

(十六)鬢蓑(びんみの) 鬢蓑は鬢毛の少ない人に用ふるのである

(十七)前髪の芯

(十八)髻巻蓑(ねまきみの) 此の髻巻蓑を用ふる人は後毛(おくれげ)の多い人又は毛を切つた人若(もし)くは病後の爲

            (た)め毛先の短い人に用ふる

(十九)束髪の前髪蓑 之は日本髪の鬢及び前髪蓑に兼ねて用ひられてゐる

髷型並に付属用品

『結髪講義要領』(大阪美髪女学校発行)より

髷 日本髪

(一)より(九)迄は何(いず)れも丸髷の型を示したのである  即ち

(一)は司(つかさ)、(二)は極(ごく)、(三)は大(だい)、(四)は一番、(五)は二番、(六)は三番

(七)は四番、(八)は五番、(九)は六番で人に應(おほ)じ年に應じ此の髷型の大小を適當(てきとう)に使はねばならぬ

(十)鬢張り 舊式(旧式/きゅうしき)の髪に用ふ

(十一)髱芯(たぼしん)(舊式)

(十二)髱芯(たぼしん)

(十三)髱挟み(たぼはさみ)髱毛の乱れぬ爲めに之を用ふ

(十四)鬢挟み(びんばさみ)鬢の裾毛の亂(みだ)れを防ぐ用具で外部に見えぬ様(やう)耳朶(みみたぼ)の鬢裾の毛を

       挟むのである

(十五)束髪用ピン

(十六)同ゴムピン

(十七)前髪立(まへがみたて)

(十八)元結ひ

(十九)輪紙(わかみ)稚児髷又は舊式の髪に用ふ

(二十)櫛歯通し(くしばとおし) 櫛の歯の汚れ垢を此の毛に依つて梳き取るのである

(廿一)束髪用髷綱 束髪髷をかぶせる絹糸製の綱(あみ)

現在も使われている結髪用具の一部です。形状は江戸時代とほとんど変わっていません。

鬢簑 日本髪
根かもじ 日本髪
シャグマ 日本髪

▲鬢簑(びんみの)

▲左/根巻き 右/根かもじ

▲左/シャグマ(ヤクの毛) 

 中央/前髪添え 右/カブタ

日本髪 元結
丸髷 日本髪

▲丸髷の髷型

◀︎左上/髱さし二種 左下/鬢張り 中央上/丸髷の髷型 

 中央下/島田髷の芯・元結切り鋏 右/元結

​現代の

結髪用具

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